— Section 01

なぜ、見えない未来に足がすくむのか?

経営者の不安の多くは、「未来の数字(資金繰りや売上)が見えないこと」からやってきます。人間の脳は、コントロールできない「わからない状況(空白)」を本能的に恐れるようにできているからです。

ここで気づいていただきたいのは、私たちが感じる「将来の不安」の正体は、実は「過去の記憶を未来に被せたイメージ(憶測)」にすぎない、ということです。過去に苦労した経験や世間のネガティブな情報という「記憶」を、無意識のうちに未来へ投影し、まだ起きていない幻影に怯えている。それが不安の中身です。

では、どう冷静さを取り戻すか。まずは不安から逃げず、紙(日記など)に書き出してみることです。「今、何を恐れているのか」を正直に書くと、無意識に避けていた不安を自覚し、客観視できるようになります。そして、先の見えない未来ではなく「今、この瞬間」に意識を向ける。不安にとらわれそうになったら、「もし〜だったら?」と意識的に思考の向きを切り替えることで、脳のパニックを抑え、判断力を取り戻しやすくなります。

— Section 02

なぜ、「環境」のせいにしても状況は良くならないのか?

業績が伸び悩むと、つい景気や社員の能力不足など、環境や他人のせいにしたくなります。しかし、経営を立て直す社長ほど、人のせいにしない「自責の習慣」を持っています。結果を変えたければ、まずトップである自分自身が変わる――この「原因自分論」の姿勢が起点になります。自分が変わることで、周囲の状況も連動して変わっていく好循環が生まれるからです。

とはいえ、自己変革には大きな心理的ハードルがあります。人間には「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」という、変化を嫌い、慣れ親しんだ快適な状態(コンフォートゾーン)にとどまろうとする強力な本能が備わっているためです。頭では「変えなければ」とわかっていても、無意識が元へ引き戻そうとブレーキをかけます。

このハードルを越えるコツは、最初から壮大な目標を掲げないこと。脳は急激な変化に抵抗しますが、「小さな成功をこつこつ」積み重ねる段階的な改善であれば、抵抗を最小限に抑えながら、新しい自分を形づくっていけます。

— Section 03

なぜ、社員は「なんとなく不安」で立ち止まるのか?

社員もまた、先行き不透明な時代に漠然とした不安を抱えています。不安に包まれた状態では、人は身を縮めて現状維持に走り、新しい行動を起こせません。

この社員の「不安感」を行動エネルギーに変えるには、「不足感(欠乏感)」へと転換します。人は何かが足りないと感じたとき、そのギャップを埋めようと反対側の「願望」を持ち、意欲が高まる性質があるからです。現状のそこそこの成功に満足している状態では、大きなエネルギーは生まれません。そこで、会社が目指すワクワクする目標や、本来あるべき理想の姿を社員に提示します。すると、現状と理想のギャップ(不足感)に気づき、「このままではいけない」「追いつきたい」という健全な渇望が生まれます。

漠然とした不安を、明確な目標への「不足感」に変える。これが、社員が自ら動き出す原動力になります。

— Section 04

どうすれば、社員は自ら考え、動くようになるのか?

社員を育てるうえで欠かせないのが、コミュニケーションの質です。まず、社長自身が「君たちならできる」と強く期待をかけること。人には、他者から期待されるとその期待に応えようと成果を出す「ピグマリオン効果」という傾向があります。トップからの信頼と承認は、社員の意欲を一気に高めます。

また、伸び悩む部下と接するときは、彼らの「悩み」を聞き分けることが大切です。自分の能力や成長に対する「不安」は、しっかり受け止めるだけで解消へ向かいます。一方、環境や他者への「不満」は、聞くほどネガティブを増幅させるため、うまく話題を変えるのが肝心です。

そして、当事者意識を持たせるには、「私が」「あなたが」ではなく、「私たちがこれをやれば、こんな未来がある。一緒にやりませんか?」と伝えること。目標を「自分ごと」と捉えたとき、初めて主体的な行動が生まれます。

— Section 05

おわりに ― 一人で抱え込む前に

社長、見えない未来への不安も組織の壁も、あなた一人の特別な弱さではなく、人間の脳の仕組みが起こす自然な反応です。だからこそ、まずあなた自身がその仕組みを理解し、思考のクセを少し変えてみてください。トップの心の在り方が変われば、その波紋は組織全体へと広がっていきます。

経営とは本来、不安から防戦一方になるものではなく、新たな価値を生み出し、攻めることを楽しむ旅のはずです。とはいえ、自分の思考のクセは、自分一人ではなかなか客観視できないものです。「視点が偏っているかもしれない」「何から手をつけていいかわからない」と少しでも感じたら、一人で抱え込まず、まずは当社の無料相談をご活用ください。客観的な視点から現状を一緒に整理し、社長が再び情熱を持って経営を楽しめるよう、その道筋を一緒に考えます。