— Section 01

資金繰り難の相談は相手の立場を分けて考える

資金繰りが厳しく、将来の展望が見えない状態は、経営者様にとって非常に苦しいものです。私のもとにも、相談相手が誰もいないように感じている経営者様からのご相談が少なくありません。ただし、実際には相談相手になり得る人は複数います。問題は、誰に相談するかではなく、相手の立場と専門領域を分けて考えられているかです。

銀行、税理士、弁護士、取引先、家族、役員、社員、外部専門家は、それぞれ見ているものが異なります。銀行は融資先として返済可能性を見ます。税理士は税務や会計の専門家です。弁護士は法的整理や債権債務の専門家です。取引先は自社との取引継続や債権回収に関心があります。家族や社員は身近な存在ですが、資金繰り難を解決する実務経験を持っているとは限りません。

相談相手を否定的に見る必要はありません。それぞれ重要な役割があります。ただし、赤字、債務超過、資金繰り難、銀行対応、経営改善が同時に起きている局面では、一人の相談相手だけで全体を判断するのは危険です。利害関係と専門領域を整理したうえで、必要な相談先を組み合わせることが大切です。

相談先を選ぶ前提
資金繰り難の相談では、相手が何を守る立場なのか、どこまでが専門領域なのかを確認してから相談内容を決めます。
— Section 02

銀行と取引先は重要だが利害関係者でもある

銀行は、会社に融資をしている重要な関係者です。返済条件の変更、追加融資、借入明細、試算表、資金繰り表など、資金繰りに関する重要な対話は銀行抜きには進みません。したがって、銀行と誠実に向き合うことは欠かせません。

一方で、銀行は会社の相談相手であると同時に、融資債権を持つ利害関係者でもあります。金融機関は会社の重要な支援者である一方、貸した資金を守る立場でもあります。これは銀行を悪く見るという意味ではなく、銀行の立場を理解して対話する必要があるということです。

取引先も同じです。仕入先、外注先、販売先は事業を支える大切な相手ですが、未払金や売掛債権がある場合、取引先も自社の損失を避けたい立場になります。資金繰りが厳しい時に取引先へ相談する場合は、感情的なお願いではなく、支払予定、取引継続方針、改善見通しを整理して説明する必要があります。

銀行や取引先との関係を保つには、都合の悪い事実を隠さず、資料にもとづいて説明する姿勢が重要です。試算表、借入一覧、資金繰り表、改善計画が整っていれば、相手も状況を判断しやすくなります。逆に、数字が曖昧なまま相談すると、相手は不安を強めます。

— Section 03

税理士や弁護士に相談すべき領域を整理する

税理士は、税務申告、会計処理、決算書、税金に関する重要な専門家です。月次試算表や決算書の整理、税務上の論点、会計資料の確認では大きな役割を担います。ただし、税理士は税金と会計の専門家であり、必ずしも資金繰り、銀行対策、会社再生の専門家ではない場合もあります。

もちろん、資金繰りや銀行対応に強い税理士もいます。重要なのは、税理士という資格名だけで判断するのではなく、相談しようとしている課題に対して、どの経験と専門性を持っているかを確認することです。資金繰り表、リスケジュール交渉、経営改善計画、銀行への説明資料まで対応できるかは、個別に見極める必要があります。

弁護士は、法的整理、債権債務、契約、訴訟、破産や民事再生などの専門家です。法的な問題が発生している場合、弁護士への相談は不可欠です。ただし、会社を立て直したい局面では、法的整理に入る前に、事業が再生可能か、資金繰りをどう安定させるか、営業活動やコスト構造をどう改善するかも検討しなければなりません。

  1. 税務、会計、申告、決算整理は税理士に確認する
  2. 契約、債権債務、法的整理は弁護士に確認する
  3. 資金繰り、銀行対応、経営改善は経験領域を確認する
  4. 再生可能性は損益、資金繰り、事業の黒字化余地で判断する
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赤字企業に必要なのは資金調達だけではない

赤字や債務超過の会社が資金繰りに困ると、「資金調達できる先を探す」ことに意識が向きます。しかし、赤字や債務超過に陥った企業が資金調達だけをあてにすると、根本的な改善が後回しになります。赤字を黒字にする対策こそが問題解決策であり、赤字を埋めるための資金調達は根本解決ではありません。

資金調達コンサルタントを、業績がまずまずの企業が資金調達の可能性を高めるために活用することは一つの選択肢です。しかし、赤字や債務超過の企業が、資金調達だけに期待しても限界があります。融資が受けられない状態で必要なのは、資金調達先を探し続けることではなく、事業の赤字原因と返済負担を整理し、再生可能性を判断することです。

私が再生可能性を見る時に重視するのは、借入金額の大きさや返済できないこと自体よりも、事業が黒字またはトントンか、現状赤字であれば改善努力によってトントンまで持っていけるかです。この視点は、相談先を選ぶうえでも重要です。

資金繰り難の相談では、資金をどう借りるかだけでなく、事業をどう黒字化するか、返済負担をどう一時的に軽減するか、資金繰り表でいつまで持つか、どの不採算事業や取引を見直すかを同時に考える必要があります。相談相手には、この全体像を見られる力が求められます。

— Section 05

相談前に準備したい資料と経営者の姿勢

資金繰り難で相談する前には、最低限の資料を整理しておくと、相談の精度が大きく上がります。決算書、直近の試算表、借入一覧、資金繰り表、売掛金や在庫の状況、主要取引先別の採算、固定費の内訳などです。資料が不足している場合でも、分かる範囲で整理することが大切です。相談相手は、資料がなければ判断できません。

経営者の姿勢も重要です。資金繰り難の原因を外部環境だけに置いてしまうと、改善の手が止まります。受注低迷、利益幅減少、赤字決算、債務超過、資金ショートといった状況では、早く手を打つことが重要です。現実を直視し、事業力、財務力、組織力、意思決定のどこに課題があるのかを確認する必要があります。

相談する際は、「資金を借りたい」だけでなく、「事業のどこを直せば資金繰りが安定するか」「返済条件をどう考えるべきか」「銀行に何を説明すべきか」「自社だけで改善できることは何か」を問いとして持つと、相談の質が高まります。これは経営者自身の判断力を取り戻すためにも有効です。

株式会社コンサルティング・ネットワーク(CNC)では、資金繰りが厳しい中小企業の現状整理、銀行対応、リスケジュール後の経営改善、赤字原因の整理、再生可能性の検討を支援しています。誰に相談すべきか迷っている場合でも、まずは資料を整理し、会社の現状を客観的に見るところから始めることが重要です。

赤字や債務超過で資金繰りが厳しい時、相談相手は一人に限定するものではありません。ただし、相手の立場と専門領域を理解せずに相談すると、判断が遅れます。銀行、税理士、弁護士、取引先、外部専門家の役割を分け、資料にもとづいて現状を整理することが、会社を立て直すための第一歩です。